学生マンションの入居条件 >> 契約時の注意点について >> 原状回復義務と保証金トラブル
敷金(預かり保証金)と転居退室時の原状回復義務費用
学生マンションに入居する際に、預かり保証金(敷金)を学生マンション運営者に預けますが、転居退出時に不動産会社やマンション管理会社が入居者本人立会いの下で部屋をチェックし、双方何も異存が無ければ、通常は返金されるべき性格のお金です。ところが、近年この保証金を返金しない又は保証金の返金に応じない運営会社が増えて社会問題化している現実があります。何が(どこが)マンション管理会社と最ももめる争点に成っているのかを入居前に知って、トラブルに成らないように注意しましょう。国土交通省、住宅局住宅総合整備課、マンション管理対策室では「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(PDF)の改訂を行い、その要点を解説しています。
敷金の定義とは?
「敷金」の定義ですが、一般に敷金とは、「賃借人が借りた家屋を明け渡すまでに生じた賃貸人に対する一切の債権を担保するものである」とされています。ここでいう『一切の債権』とは、賃貸人の賃借人に対する未払賃料債権と 損害賠償債権の二つが主なものとしてあげられます。しかし、未払賃料債権はその存否が比較的明確であるので、敷金返還に際して特に問題となるのは損害賠償債権であるといえます。そしてこの損害賠償債権は、主に原状回復義務から生じるものです。
原状回復とは?
入居時にクロスも畳もピカピカだったとしたら、退去するときにもピカピカにすると意味でしょうか?
4年間住んだ場合でも、半年間しか住んでいない場合でも、同じ扱いになるのでしょうか?
この疑問に対して、国土交通省の見解では、原状回復とは、下記の3点を復旧することであると定義しています。
※賃借人の故意・過失による損耗・毀損
※賃借人の善管注意義務違反による損耗・毀損
※賃借人の通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損
いわゆる経年変化、通常の使用による損耗等の修繕費用は、賃料に含まれるものとしました。
原状回復とは、借りた当時の状態に戻すことではないことが明確化されているのです。
画像の答え:上記解釈から「畳が自然に日焼け」したのは「通常使用の範囲」と考えられ、現状回復義務の範疇には該当しないと考えられます。従って、畳の表替え名目で保証金から引かれて返金されるのはおかしいと言えます。
学生マンションの入居条件 >> 契約時の注意点について >> トラブルの未然防止方法
退去時・原状回復にかかるトラブルの未然防止方法
契約時における物件の確認の徹底
入居時にチェックリストを作成
部位ごとの現況を十分に確認すること
双方当事者が立会い入居時状況認識を共有
原状回復に関する契約条件等の開示
賃貸人は賃借人に対して原状回復の内容等を契約前に開示する。
賃貸人は契約内容について賃借人の十分な理解と認識を得ること。
特約について
賃貸借契約において特約を設ける場合は、以下の点に留意する。
イ 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
ロ 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
ハ 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること
参考資料サイト
貸室契約の原状回復特約の解釈(くらしの判例集)_国民生活センター
学生マンションの入居条件 >> 契約時の注意点について >> 通常使用時の損耗等の貸主負担
経年変化、通常の使用による損耗等の貸主負担
通常の住まい方で発生するもの、建物の構造により発生するもの、入居者確保のために行うものについては、貸主の負担費用となります。
貸主負担の具体例(原状回復ガイドラインからの一部抜粋)
家具の設置による床・カーペットのへこみ、設置跡
テレビ・冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(電気ヤケ)
壁に貼ったポスター等によるクロスの変色、日照など自然現象によるクロス・畳の変色、フローリングの色落ち
借主所有のエアコン設置による壁のビス穴・跡
下地ボードの張替が不要である程度の画鋲・ピンの穴
耐用年限到来による設備・機器の故障・使用不能
構造的な欠陥により発生した畳の変色、フローリングの色落ち、網入りガラスの亀裂
特に破損等していないものの、次の入居者を確保するために行う畳の裏返し・表替え、網戸の交換、浴槽・風呂釜等の取替え、破損・紛失していない場合の鍵の取替え
フローリングのワックスがけ、台所・トイレの消毒、専門業者による全体のハウスクリーニング
認められない契約書の特約について
通常損耗を賃借人(借主)負担とする特約事項は、消費者契約法10条により、無効になる裁判例もあります。
民法420条により、契約の当事者は、損害賠償の額を予定し、契約で定めることができます。
これを損害賠償額の予定といいますが、賃借人が賃貸借契約に関して、賃貸人に損害を与えた場合に備えて規定するものであり、約定された損害賠償額が暴利行為に当って無効になる場合や消費者契約法により無効になる場合など、特段の事由がない限り、このような特約は有効と認められています。
賠償額を予定してそれを契約すると、退去時において実損額にかかわらず予定賠償額が賠償額となり、減額も増額もできないことになります。(※「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン 」より抜粋)